本展では、岡本羽衣の作品を通して視覚情報で溢れ、実存の希薄性をもった現代社会において、いかに私たちの実存が再認識できるのかを試みます。
岡本は現在、東京藝術大学大学院博士後期課程に在籍し、自身が訪れた場所の出来事やそこで暮らす人々の個人的な体験をもとに作品を展開し、国内外で活動を行う作家です。
今回の個展では、石巻を中心としたリサーチによって、その土地の石(伊達冠石、稲井石)や漁業で扱われていた小道具「アバ」を模したオブジェクト、石巻の風景をもとに描かれた絵画が石庭や能舞台を彷彿させるような空間を作ることによって、山・川・海、またはそれらをつなぐ「橋」を設けることで、人々の生活の営みの場からその土地の記憶へと導きます。
私たちは、自身を取り巻く環境によって無意識のうちに自己を形成してきたといえるのではないでしょうか。岡本の表現は、私たちの無意識の中にある場所性と向き合うことで自己のもつ過去の経験へと振り返り、再構成を行うことで、私たちの見えない不確かな何かが意味付けられるような働きをかけます。
それによって、客観的かつ記号的なイメージが溢れた現代に対し、質感をもてるイメージを作り、鑑賞者の意識の中に眠るリアリティを呼び起こすことを試行します。
おやすみ帝国 代表 ミシオ
岡本羽衣(おかもと はごろも)
1990年長野県生まれ。現在、東京藝術大学大学院美術研究科
博士後期課程美術専攻油画に在籍。
これまでの展示に「
冷骨」(東京藝術大学
修了展
、2018)、個展「ich habe noch nicht mal gefrühstückt」(Somos:
ベルリン、2017)、個展「ありうる」
(ドマトココ、2015)、「Mémories vagues/それを見たという」
(ギャラリー蔵織、2015)、
「アートイン・湯宿」(
みなかみ/湯宿・群馬、2016)、
ほか。